秀句(90点以上)
秀句(90点以上)は、Aiが評価を点数化したものです。
(順不同、氏名は希望により省略させていただいております。)
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秋の蚊や すすり泣くごと 細き音
これはかなり完成度の高い一句だと思います。
背景を知らなくても「秋の蚊」の弱々しさが「すすり泣く」によって伝わりますし、背景を知るとさらに味わいが増します。
原句
秋の蚊や すすり泣くごと 細き音
総合評価 92点/100点
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評価項目 |
点数 |
コメント |
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発想力 |
19/20 |
弱い羽音を「すすり泣き」と捉えた感性が秀逸 |
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音の表現 |
20/20 |
「すすり泣く」「細き音」が聴覚的で非常に効果的 |
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映像性 |
16/20 |
映像より「音」で成立させた句 |
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余韻 |
19/20 |
一匹の蚊への哀れが静かに残る |
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技術・完成度 |
18/20 |
ほぼ完成形。わずかに推敲の余地あり |
特に良いところ
何より、
すすり泣くごと
がいいですね。
蚊の羽音なら普通は「うるさい」「耳障り」と捉えます。それを、秋になって弱った一匹の蚊に耳を澄ませ、**「泣いているようだ」**と感じたところに、この句独自の眼差しがあります。
しかも「泣く」ではなく**「すすり泣く」**。
大声ではありません。途切れそうな細い声です。そのため、
すすり泣くごと → 細き音
と、聴覚のイメージがきれいにつながっています。
また、上五の
秋の蚊や
もよく効いています。
「や」で一度切れることで、まず弱々しい秋の蚊を提示し、そのあと静かな羽音へ耳を近づけていくような構造になっています。
少しだけ気になるところ
「すすり泣く」と「細き音」は、
どちらも弱々しい音を表しているため、意味が少し重なります。
ただし、これは欠点というほどではありません。むしろこの句では、その重なりが弱々しさを強調する効果にもなっています。
推敲するとすれば、結句を変えて余韻を広げる方法があります。
添削案①
秋の蚊や すすり泣くごと 闇を飛ぶ
「すすり泣く」で音を十分表現しているので、最後を映像に転じます。
ただ、原句にあった「細い羽音」そのものの実感は少し薄れます。
添削案②
秋の蚊や すすり泣くごと 耳を過ぐ
こちらは人間との距離が出ます。耳元をかすかに通り過ぎる蚊の存在が見えてきます。
私なら――原句を採ります
秋の蚊や すすり泣くごと 細き音
今回は、添削案より原句のほうがいいと思います。
特に背景にある「哀れを感じた」という気持ちを、句の中で「哀れ」「弱々し」と一言も説明していないのがいい。「すすり泣くごと細き音」だけで読者に感じさせています。
そして面白いのは、蚊に対する人間の立場が一瞬逆転していることです。盛夏なら「また蚊か」と追い払う存在なのに、秋の一匹には思わず耳を澄ませてしまう。
そこに俳味があります。
92点。言の葉ラボにそのまま掲載してよい完成句だと思います。
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子や孫の好物揃ふ夜の秋
この句はいいですね。派手な言葉はないのに、子や孫を待つ家の幸福感がじんわり伝わってきます。
そして季語「夜の秋」の選択が、この句を単なる家族詠以上のものにしています。
総合評価 92点/100点
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項目 |
点数 |
評価 |
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発想力 |
18 |
帰省を「好物」で表したところが巧い |
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音の表現 |
18 |
「このまごの/こうぶつそろう/よるのあき」17音にきれいに収まる |
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映像性 |
18 |
食卓や買い揃えた品々、その向こうに家族が見える |
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余韻 |
20 |
子や孫はまだ登場していない。その不在がかえって効く |
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技術・完成度 |
18 |
季語「夜の秋」が心情まで受け持っている |
|
総合 |
92 |
秀作。原句を大切にしたい一句 |
特にいいのは「揃ふ」
背景を知らずに読んでも、
子や孫の好物揃ふ
だけで、「もうすぐ帰ってくるのだな」と分かります。
「子や孫が帰省する」「楽しみに待っている」と説明していません。**好物を揃えるという行為だけで、祖父母の愛情を語っている。**ここがこの句の一番の魅力です。
しかも、まだ子や孫は来ていません。
お菓子、果物、飲み物、好きなおかずの材料……そんなものが家に揃っていく。その一つ一つに、
「これは孫が好きだったな」
「これは息子(娘)が好きだから」
という気持ちが込められているのでしょう。
「夜の秋」がよく効いています
「夜の秋」は、夏の終わりごろ、昼はまだ暑いものの夜には秋めいた気配を感じるころを表す季語です。
この句を、
子や孫の好物揃ふ秋の夜
としてしまうと、本格的な秋の夜になります。
原句の
夜の秋
だからこそ、夏から秋へ移る微妙な時間と、「もうすぐ帰ってくる」という待つ時間が重なります。
季節も待っている。祖父母も待っている。
この重なりがきれいです。
添削案
今回は、原句を第一に推します。
子や孫の好物揃ふ夜の秋
あえて別案を作るなら、
子や孫の好物並ぶ夜の秋
も考えられます。
「並ぶ」にすると、テーブルなどに好物が並んでいる光景がより具体的になります。ただし、原句の「揃ふ」には、あれも買った、これも用意した――これで準備万端という喜びがあります。
ですから私は「揃ふ」を残します。
もう一案、
子や孫を待ちて好物夜の秋
こちらは「待つ」を表に出しますが、説明しすぎです。原句のほうが上です。
ことの葉LAB掲載コメントなら
この句は、初心者の方にも「説明しない俳句」のお手本として紹介できそうです。
「うれしい」「待ち遠しい」「帰省する」と一言も書かず、「好物揃ふ」だけでそれを感じさせる。
そこが92点と高く評価した理由です。
そして、最後を「夜の秋」としたことで、にぎやかな再会そのものではなく、再会前夜の静かな幸福を詠んだ句になりました。
私はこの句、添削せず原句のまま掲載を推します。
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隣なる墓へ移れり赤とんぼ
この句はかなり良いと思います。
背景を知らなくても、墓地の静けさ、赤とんぼの小さな動き、
そして死者と生者の時間の違いまで感じられます。今回は少し厳しめに見ます。
原句
隣なる墓へ移れり赤とんぼ
総合評価 91点/100点
発想力:19/20
音の表現:17/20
映像性:19/20
余韻:19/20
技術・完成度:17/20
特に良いところ
何より「隣なる墓へ」がいいですね。
単に、
墓に止まりし赤とんぼ
では、墓地で見かけた赤とんぼの写生で終わります。
ところが「隣なる墓へ移れり」としたことで、こちらの墓から隣の墓へ、
赤とんぼがすっと移動する瞬間が見えます。
そして面白いことに、作者自身は一句の中に登場していません。
実際には「私が近づいたので飛び移った」わけですが、その事情を全部捨てて、
墓 → 墓 → 赤とんぼ
だけを残した。この省略は俳句として成功しています。
さらに「移れり」という言葉が、少し不思議な響きを持っています。
人間にとって墓は「○○家之墓」と区切られた場所ですが、赤とんぼにはそんな境界はありません。
こちらの墓から隣の墓へ、何のためらいもなく移る。
そこに、
死者を分ける人間と、分けない自然
という読みまで生まれます。作者がそこまで言っていないからこそ、余韻があります。
厳しく見るなら
気になるのは「隣なる」です。
文語として美しい一方、
隣なる墓へ移れり
と「なる」「れり」が重なり、やや作為的な古語調にも感じられます。
また「移れり」は、実際には「飛び移った」のですから、
その一瞬の軽やかな動きをもう少し出す方法もあります。
たとえば、
隣り墓へふっと移りぬ赤とんぼ
「ふっと」で動きは見えますが、これは説明を足しすぎでしょう。原句の静謐さが薄れます。
むしろ、
隣り墓へ移りにけりな赤とんぼ
これも古典調が強すぎます。
そこで私は、原句をほとんど動かさないのが最善だと思います。
推敲案
隣りの墓へ移れり赤とんぼ
「隣なる」を「隣りの」にするだけです。
原句
隣なる墓へ移れり赤とんぼ
推敲案
隣りの墓へ移れり赤とんぼ
私は僅差ですが、原句の「隣なる」も捨てがたいです。
墓という古い時間を背負った対象には、この少し古風な響きが似合っています。
そして、この句で私が一番好きなのは、赤とんぼが**「飛ぶ」のではなく「移る」**ことです。
「飛ぶ」なら空へ視線が向かいます。
しかし「移る」だから、二つの墓の間のほんのわずかな距離に焦点が当たる。
その小さな移動によって、逆に墓地全体の静けさが際立っています。
ですから、最終的には――
隣なる墓へ移れり赤とんぼ
原句をそのまま残してよい。91点。
今回の句は、添削して華やかにするよりも、この何も起こっていないようで、
ほんの少しだけ世界が動いた感じを守るほうがよい俳句だと思います。
女来て金魚あわ吹く午後三時
修正評価:93点/100点
(前回89点 → 93点)
発想力:19/20
音の表現:19/20
映像性:19/20
余韻:18/20
技術・完成度:18/20
改めて読むと、かなり完成度の高い句です。
特に面白いのは、**「女来て」→「金魚あわ吹く」→「午後三時」**という展開です。
「女来て」は素っ気ない。
「金魚あわ吹く」で突然ユーモラスになる。
そして「午後三時」で、ごく普通の日常風景へ戻る。
この落差がいい。
しかも背景にある「おしゃべりな人が一人でまくしたてた」という事情を、句では一言も説明していません。
それなのに、金魚の「あわ」から、
金魚まで何か言いたそうだ
という可笑しさが立ち上がります。
原句の、
午後三時
のほうが断然いいです。
「かな」と作者の感慨を加えず、時計を見たように**「午後三時」と事実だけでぷつんと終わる**。そこに「やれやれ、ティータイムが終わった」という乾いたユーモアがあります。
結論
女来て金魚あわ吹く午後三時
このままを推します。
添削しないほうがよい句だと思います。
なお第二句の「饒舌や金魚反転耳覆う」についての81点という評価は基本的に変えません。二句を並べても、第一句のほうが説明を抑えていて一枚上です。
饒舌や金魚反転耳覆う
総合評価:81点/100点
発想力:19/20
音の表現:15/20
映像性:17/20
余韻:14/20
技術・完成度:16/20
こちらも着想は非常に面白い。
金魚反転
がいいですね。
しゃべり続ける人の声を聞いて、
「もう勘弁してくれ」
とばかりに金魚がくるっと向きを変える。
問題は、
耳覆う
です。
もちろん擬人化として意図的なのでしょうが、「反転」と「耳覆う」の二つを金魚にさせたため、
少し作為が見えます。
しかも「饒舌」で既に「しゃべりすぎる人」を提示しています。
饒舌 → 金魚反転 → 耳覆う
と三段階で説明してしまった感じがあります。
俳句では、金魚が反転したところで止めて、あとは読者に笑ってもらうほうが洒落ています。
私なら
饒舌や金魚くるりと背を向ける
これが面白いと思います。
「反転」という硬い言葉を「くるり」に替えることで、金魚の動きが見えます。
さらに少し辛辣にするなら、
饒舌や金魚もつひに背を向ける
「も」がポイントです。
人間だけではない。金魚まで嫌になったらしい。
という可笑しみが生まれます。
二句を比べると
私は明確に、
第一句 > 第二句
です。
第一句は「おしゃべり」という言葉を一度も使っていないのに、
女来て
↓
金魚あわ吹く
↓
午後三時
だけで一場面が成立しています。
一方、第二句は「饒舌」と最初から答えを言ってしまっています。
ですから、この題材ではむしろ、しゃべる・うるさい・饒舌などを言わずに、金魚の様子だけで来客のすさまじさを表現する方向が面白いでしょう。
たとえば、少し遊ぶなら、
客来たる金魚くるりと藻の陰へ
なんていう句も考えられます。
しかし今回の一押しは、やはり原句の
女来て金魚あわ吹く午後三時
です。
「金魚あわ吹く」に作者の小さな毒と笑いがあります。こういう句は、あまり上品に直しすぎないほうがいい。金魚を作者の代弁者にしてしまったところが、この句の一番の魅力だと思います。
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1首目
開け放ち黴の館の夏炉焚く

· 総合評価 90点/100点
|
評価項目 |
点数 |
講評 |
|
発想力 |
19 |
真夏に炉を焚く逆説的な光景が強い |
|
音の表現 |
17 |
「黴の館」が重く、句の雰囲気に合う |
|
映像性 |
19 |
開け放った古家、煙、炉まで鮮明 |
|
余韻 |
18 |
無人となった実家の時間を感じる |
|
技術・完成度 |
17 |
「開け放ち」の目的語がなく少し宙に浮く |
|
合計 |
90 |
独特の生活実感を持つ佳句 |
· これは面白い句です。
· 特に、
· 黴の館の夏炉
· という取り合わせが強烈です。
· 「夏炉」は、夏に使われる炉・夏季の炉で夏の季語。「黴」も夏の季語ですから、季重なりではあります。しかしこの句の場合、黴が生えたから夏なのに炉を焚くという因果関係があります。
· したがって私は、この季重なりを大きな欠点とは取りません。
· むしろ、
· 夏なのに、なぜ炉を焚いているのか?
· という疑問を「黴」が説明しています。
· 惜しいのは「館」
· 「黴の館」は印象的なのですが、少々おどろおどろしい。「館」から洋館や廃墟を想像する読者もいるでしょう。
· 背景にあるのは、誰も住まなくなった実家です。
· そこには怖さ以上に、懐かしさや寂しさがあるはずです。
· そこで、
· 戸を放ち黴の古家に夏炉焚く
· という方向も考えられます。
· ただ、「開け放ち」の勢いは捨てがたい。
· 私の推敲案
· 戸を開けて黴の古家に夏炉焚く
· 意味は明瞭になりますが、原句の迫力は少し落ちます。
· むしろ私は、多少荒々しくても、
· 開け放つ黴の古家や夏炉焚く
· を推します。
· 「開け放つ」と現在形にして、家中の戸を一斉に開ける動作を前面に出す。
そして「や」で一度切り、最後に意外な「夏炉焚く」を置く。
· ただし、原句の**「黴の館」には忘れ難い強さ**があります。
作者があえて少し怪奇的に詠んだのなら、原句を残す選択も十分あります。
2首目
初盆の友を訪ねて世迷言
· 総合評価 93点/100点
|
評価項目 |
点数 |
講評 |
|
発想力 |
19 |
初盆の友に「世迷言」を話すという発想がいい |
|
音の表現 |
18 |
「初盆」「友」「世迷言」の運びが自然 |
|
映像性 |
17 |
仏前に座って語る姿が浮かぶ |
|
余韻 |
20 |
生者と死者の距離が消える結句 |
|
技術・完成度 |
19 |
説明を削った簡潔さが効いている |
|
合計 |
93 |
今回はこちらを一席に取ります |
· こちらは、私はかなり好きです。
· 最大の魅力は、
· 世迷言
· でしょう。
· 亡くなった友を訪ねたのだから、本来なら、
· 「偲ぶ」
「手を合わす」
「冥福を祈る」
· となりそうなところです。
· ところが作者は、亡くなった友に世迷言を言いに行く。
· ここがいい。
· 「お前、ちょっと聞いてくれよ」と、友がまだ生きていた頃と同じように愚痴をこぼしている姿が見えてきます。
· しかも、友から返事はありません。
· その返事のない会話が、句の外側に大きな余韻を作っています。
· 「訪ねて」は少し説明的か
· 一点だけ考えたいのが、
· 友を訪ねて
· です。
· 意味は非常によく分かります。ただ「初盆の友」で、すでに友を訪ねている場面はある程度想像できます。
· ですから、この五音分をもう少し感情側へ使う方法があります。
· 推敲案①
· 初盆の友の仏間へ世迷言
· かなり具体的になります。
· ただし「仏間」と限定してしまうため、原句の余白は減ります。
· 推敲案②
· 私はこちらを推したいです。
· 初盆の友に聞かせる世迷言
· 「訪ねる」という行動から、亡き友との会話へ焦点が移ります。
· 友はもう返事をしてくれない。それでも「聞かせる」。
· そこに切なさがあります。
· ただ、原句の、
· 初盆の友を訪ねて世迷言
· も十分完成しています。むしろ淡々としているからこそ、作者の感情を押しつけない良さがあります。
· 二句を並べると
· 今回、偶然でしょうが二句に共通するものがあります。
· 一方には誰も住まなくなった家があり、もう一方にはもう話せなくなった友がいる。
· それでも作者は、
· 家には火を焚き、友には話しかける。
· ここがとてもいいですね。
· 私なら、第一句 90点、第二句 93点。特に「初盆の友を訪ねて世迷言」は、説明を加えすぎないほうがいいでしょう。「世迷言」の裏側にある友情を読者に想像させる句として、原句をかなり高く評価します。
草の波影絵の丘に盆の月
この句は、かなり完成度が高いと思います。
**「草の波」「影絵」「盆の月」**と、視覚的な言葉だけで静かな高原の夜を描いています。
背景を知らなくても、一枚の絵として立ち上がる句です。
原句
草の波影絵の丘に盆の月
総合評価 92点/100点
|
評価項目 |
点数 |
講評 |
|
発想力 |
18 |
風に揺れるすすきを「草の波」と捉えたのが美しい |
|
音の表現 |
17 |
静かな調べだが、中七にやや詰まりがある |
|
映像性 |
20 |
丘・草原・月が一枚の絵になる |
|
余韻 |
19 |
「盆の月」に郷愁と静けさが宿る |
|
技術・完成度 |
18 |
季語との関係も自然。語順に推敲の余地 |
|
合計 |
92 |
絵画性の非常に高い佳句 |
一番評価したいのは「草の波」
背景では「ススキの草原」とありますが、あえて「すすき」と言わず、
草の波
としたところがいいです。
風が吹くたび、高原一面の草がざわざわと同じ方向へ傾き、また戻る。その動きが「波」の一語で見えます。
そして次の、
影絵の丘
も美しい。
月明かりの中では草一本一本を描写する必要はありません。丘全体が黒いシルエットになる。「草の波」という動く景色と、「影絵の丘」という静止した景色が重なっています。
「盆の月」が句を深くしています
単に「秋の月」「満月」としなかったのも重要です。
**「盆の月」**には月の美しさだけでなく、人を偲ぶ心や、過ぎてゆく夏、どこか懐かしい気配まで含まれます。
そのため、単なる高原の風景写真ではなく、少し人間の心を感じさせる風景になっています。
惜しいのは中七
声に出してみると、
草の波/影絵の丘に/盆の月
「影絵の丘に」のところがやや説明的です。
また、「草の波」と「影絵の丘」がそれぞれ強い比喩なので、比喩が二つ連続する点も少し気になります。
添削第一案
草の波丘を影絵に盆の月
これはかなりすっきりします。
「丘が影絵のようだ」と名詞で説明するより、
盆の月が丘を影絵にしている
という関係が生まれます。
月が照らすことによって、丘とすすきが黒いシルエットとして浮かび上がる。原句の情景にも合っています。
第二案――原句の美しさを優先
草波や影絵となりし盆の丘
こちらは「草波」を強く出した形。ただし、肝心の「月」が消えてしまいますので、私は原句には及ばないと思います。
私ならどちらを採るか
原句
草の波影絵の丘に盆の月
推敲句
草の波丘を影絵に盆の月
私は僅差で推敲句を採ります。
「丘を影絵に」とすることで、
草の波 → 丘 → 月
と、視線が地上から空へ自然に上がっていくからです。
そして最後に大きな「盆の月」が現れる。
92点。十分に投稿作品として通用する一句です。 特に生石高原のような広大な草原を、説明せず「草の波」と捉えた感覚を高く評価します。映像化しても、とても美しい作品になるでしょう。
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一茶の句尽きて今宵は星月夜
この句はいいですね。
読書に没頭しているうちに日が暮れ、本を閉じたところで「星月夜」が現れる。
一茶の世界から現実の秋夜へ戻る瞬間が一句になっています。
今回はかなり完成度が高いと見ます。
一茶の句尽きて今宵は星月夜
総合評価 91点/100点
|
項目 |
点数 |
評価 |
|
発想力 |
18 |
「一茶」と「星月夜」の取り合わせが自然で味わい深い |
|
音の表現 |
18 |
「尽きて/今宵は」の運びが静か |
|
映像性 |
18 |
本を閉じ、ふと外を見る場面が浮かぶ |
|
余韻 |
19 |
一茶の句世界と現実の星空が重なる |
|
技術・完成度 |
18 |
ほぼ完成形。わずかに「尽きて」が検討点 |
特に良いところ
一番いいのは、
「一茶の句尽きて」
です。
単に「一茶読み終え」としなかったところに味があります。
「本を読み終えた」ではなく、一茶の句が尽きた。
読者にとって一茶の世界がしばらく続いていたことが感じられます。
そして、その世界が尽きた瞬間、
今宵は星月夜
と現実世界が開く。
室内の「本」という小さな世界から、いきなり広大な夜空へ視界が広がります。
この転換がきれいです。
「今宵は」も効いています。
一茶の句を読み耽ったからこそ、いつもの夜空まで少し違って見えた――そんな気分があります。
気になるのは「尽きて」
ここだけ少し考えてみたいところです。
「尽きる」には「すべて終わる」「なくなる」という響きがあります。そのため、
一茶の句そのものが尽きてしまった
とも一瞬読めます。
もちろん、それを含めて詩的な表現とも言えますので、私は原句を十分採用圏内と見ます。
より読書の場面を明瞭にするなら、
一茶読み終えて今宵の星月夜
分かりやすくなりますが、これは逆に原句より平凡です。
「一茶の句尽きて」が持っていた余情が消えます。
そこで、もう一案。
一茶の句閉ぢて仰げば星月夜
こちらは映像が非常にはっきりします。
本を閉じる → 顔を上げる → 星月夜。
ただし、「仰げば」によって作者の動作を説明してしまうので、原句の静かな余白では一歩譲ります。
私なら原句を推します
今回は、添削して整えるより、
一茶の句尽きて今宵は星月夜
をそのまま残したいと思います。
「尽きて」という少し不思議な言葉が、この句ではむしろ魅力になっています。
そしてもう一つ面白いのは、一茶を読み終えて外を見たら、そこにも一句ありそうな世界が待っていたという構造です。
本の中の一茶の句は尽きた。
けれど、外には星月夜がある。
つまり、句は尽きても、俳句の世界は尽きない。
そこまで余韻が伸びるのが、この句の一番いいところです。私は91点、原句推奨とします。
願わくはぴんぴんころり寒椿
まず一句を読んで思わず笑みがこぼれました。
「ぴんぴんころり」という俗語と、「願わくは」という格調高い言い回し、そして「寒椿」という美しい季語。この落差が、この句の最大の魅力です。
「辞世の句」と構えず、「人生の締めくくりを笑って語る一句」として読むと、
とても味があります。
原句
願わくはぴんぴんころり寒椿
総合評価 92点/100点
|
評価項目 |
点数 |
講評 |
|
発想力 |
19/20 |
「願わくは」と「ぴんぴんころり」の対比が秀逸 |
|
音の表現 |
18/20 |
語感が軽快で覚えやすい |
|
映像性 |
17/20 |
映像より言葉の妙を味わう句 |
|
余韻 |
19/20 |
笑いの奥に人生観がにじむ |
|
技術・完成度 |
19/20 |
十七音に無理なく収まっている |
この句の一番良いところ
「願わくは」は、
願わくは花の下にて春死なん…
(西行)
を思わせる格調ある語です。
そこへ突然
ぴんぴんころり
が来る。
この落差が実に愉快です。
読者は
「そんな願いか!」
と、くすっと笑います。
しかも笑いだけでなく、
「そう願いたいよね」
という共感も生まれます。
ただ、もっと笑わせる余地があります
この句は現在、
上品な笑い
です。
もっと笑いを強めるなら、
最後に少しだけ意外性が欲しいところです。
添削案①(私の一押し)
願わくはぴんぴんころり冬椿
「寒椿」より「冬椿」の方が柔らかく、音も軽いです。
添削案②
願わくはころりと逝きたし寒椿
俳味はこちらが強くなります。
添削案③(笑い重視)
ぴんぴんと生きてころりと寒椿
リズムが非常によくなります。
添削案④
願はくは医者も驚く寒椿
ブラックユーモアが少し入ります。
添削案⑤
願はくは寝息のつづき寒椿
笑いは控えめですが、品があります。
「寒椿」は季節が限定されます
ご質問の
春夏秋に亡くなったら?
についてですが、
辞世として考えるなら、
季節ごとに差し替えられる季語を用意しておくのも面白いですね。
例えば同じ形で、
春
願わくはぴんぴんころり花の下
西行へのオマージュにもなります。
あるいは
願わくはぴんぴんころり春の月
夏
願わくはぴんぴんころり夕立あと
あるいは
願わくはぴんぴんころり風鈴に
風鈴は明るく笑いがあります。
秋
願わくはぴんぴんころり秋灯
または
願わくはぴんぴんころり秋桜
穏やかな終末感があります。
冬
願わくはぴんぴんころり寒椿
これが最も締まります。
その持ち味を生かすなら、私はこんな一句も好きです。
願わくは笑うてころり寒椿
総評
原句は辞世というより、「人生百年時代の理想」を軽やかに詠んだ俳句として非常によくできています。ユーモアを強めるというご希望なら、「ぴんぴんころり」はそのまま生かすのが一番です。これ以上ひねり過ぎると、かえって作り物めいてしまいます。
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風鈴の鳴るをかぎりに暇乞い
日常の一瞬を切り取った人情味のある佳句です。
「風鈴が鳴ったから帰る」という出来事ではなく、
風鈴が会話の終止符を打ったという心理の機微がよく表れています。
厳しく見ても、完成度はかなり高い部類です。
原句
風鈴の鳴るをかぎりに暇乞い
総合評価 91点/100点
|
評価項目 |
点数 |
講評 |
|
発想力 |
18/20 |
風鈴を会話の区切りと捉えた着眼が秀逸 |
|
音の表現 |
18/20 |
調べは滑らかで格調もある |
|
映像性 |
18/20 |
玄関先、軒下の風鈴、立ち話が自然に浮かぶ |
|
余韻 |
19/20 |
「暇乞い」で人間関係の温かさまで伝わる |
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技術・完成度 |
18/20 |
「鳴るをかぎりに」の措辞にやや検討の余地 |
この句の優れている点
① 「風鈴」が時間を動かしている
普通なら
話が終わったから帰る
となります。
しかしこの句では、
風鈴が鳴いたことが帰るきっかけ
になっています。
季語が単なる背景ではなく、句を動かす役割を果たしている点は高く評価できます。
② 「暇乞い」が効いている
「帰る」ではなく、
暇乞い
としたことで、
- 名残惜しさ
- 礼儀
- 相手との親しさ
まで含まれています。
この一語で句に品格が生まれています。
③ 説明を省いている
背景を読むと、
会話が途切れた
という事情があります。
しかし句では一切説明していません。
そのため読者は
「風鈴が鳴った、その間が絶妙だったのだな」
と自然に想像できます。
この省略は俳句らしい美点です。
厳しく見ると
「鳴るをかぎりに」がやや硬い
「〜を限りに」は
- 今日を限りに
- 今回を限りに
など、最後・終止の意味で使われる慣用句です。
もちろん意味は通りますが、
風鈴が一度鳴ったこと
に用いると少し大げさに感じます。
また、
「風鈴の音=最後の合図」
という説明がやや前へ出ています。
もう少し自然にすると余韻が増します。
「鳴る」が現在形
背景では
チリンと一度鳴った
瞬間です。
そこで
鳴りて
鳴れば
などの方が時間の流れが感じられる場合もあります。
鳴かぬ間がひときわ暑し油蝉
静かな観察から生まれた佳句ですね。
「蝉が鳴いているから暑い」のではなく、
「鳴き止んだ瞬間のほうが、かえって暑さが際立つ」
という逆説的な発見がこの句の魅力です。
いつものように、言の葉ラボの基準でできるだけ厳しく評価いたします。
鳴かぬ間がひときわ暑し油蝉
総合評価:93点/100点
- 着想:19/20
- 表現力:19/20
- 映像性:18/20
- 余韻:19/20
- 完成度:18/20
この句の長所
① 発見が新鮮
多くの人は
「蝉が鳴くから暑い」
と思っています。
しかしこの句は
鳴き止んだときの沈黙こそ暑い。
という逆転の発見があります。
この視点は十分俳句的です。
② 「鳴かぬ間」が効いている
「鳴かぬ時」ではなく
鳴かぬ間
としたことで
ほんの数秒、
蝉が息を整えているような時間が見えます。
この「間」が暑さを際立たせています。
③ 「ひときわ暑し」
素直ですが力があります。
暑さを誇張していないため、
読者も「ああ、そういうことがある」と共感できます。
気になる点
惜しいのは
油蝉
です。
「油蝉」は季語として十分ですが、
この句では
油蝉でなければならない理由がやや弱い印象です。
例えば
蝉しぐれ
でも意味は成立します。
つまり
油蝉固有の個性
(ジジジジという濁った声)
が句に十分働いていません。
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夏空や 澄み渡りそう 未来まで
評価:90点/100点
評価
- 発想:19/20
「夏空」と「未来」を結び付けた発想は素直で共感を呼びます。 - 映像性:17/20
夏空の広がりは見えますが、「未来」は抽象概念なので映像がやや弱まります。 - 表現力:18/20
「澄み渡りそう」が夏空にも未来にも掛かる点は巧みです。 - 余韻:18/20
読後感は爽やかですが、少し説明的です。 - 完成度:18/20
まとまりはありますが、一歩踏み込んだ個性が欲しいところです。
良い点
「未来まで」という着地がこの句の魅力です。
夏空の透明感を人生の希望へ自然につなげています。
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塗りたての 口紅落とす 日盛りや
評価:95点/100点
評価
- 発想:19/20
女性ならではの夏の実感がよく出ています。 - 映像性:20/20
塗りたての口紅、水を飲む仕草まで見えてきます。 - 表現力:19/20
「日盛り」が暑さを十分伝えています。 - 余韻:18/20
もう一押しの感情があるとさらに印象的になります。 - 完成度:19/20
非常に完成度の高い一句です。
良い点
「口紅落とす」という生活の一瞬を切り取った点が秀逸です。
夏の暑さを
「暑い」
と言わずに表現しているのが上手です。
少し気になる点
「日盛りだから喉が渇く」という因果がやや説明的です。
俳句では、
水を飲む→口紅が落ちる
だけでも読者は暑さを感じ取れます。
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長昼寝 枕の跡と片頭痛
背景
昼寝が長すぎたために、爽快感ではなく「枕の跡」と「片頭痛」という、
年齢を重ねたからこその現実をユーモラスに詠んだ一句です。
総合評価:91点/100点
- 発想力:19/20
- 表現力:18/20
- 映像性:19/20
- 余韻:17/20
- 技術・完成度:18/20
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扇風機 大口開けて 風食べる |
総合評価
90点/100点
項目別評価
- 発想力:18/20
- 「長昼寝」の心地よさではなく、その"後遺症"を切り取った視点は面白いです。
- 表現力:18/20
- 「枕の跡」と「片頭痛」という具体物が効いています。
- 映像性:18/20
- 鏡を見て頬の跡に苦笑する姿まで想像できます。
- 余韻:17/20
- 共感はありますが、読後の広がりはやや限定的です。
- 完成度:19/20
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雷や思案をひとつ忘れけり
【歌った背景】
年齢を重ねるにつれ思い悩むことが増えたが、
突然の雷鳴で何を考えていたのか忘れてしまった。
総合評価
90点/100点
- 発想力:19/20
- 表現力:18/20
- 映像性:16/20
- 余韻:19/20
- 完成度:18/20
良い点
まず、この句の魅力は、
「雷」と「物忘れ」をユーモラスに結びつけたところ
にあります。
普通なら雷に驚く句になりますが、
雷で思案そのものを忘れてしまう
という方向へ転じたところが面白いです。
また、
忘れけり
という切れ方も、詠嘆が効いていて自然です。
「しまった」ではなく「忘れけり」としたことで、どこか人生を達観したような味わいがあります。
さらに背景を知ると、
年齢とともに増える悩み
そして物忘れ
という人生の機微が一句の奥に潜んでいます。

















